「患者と家族と尊厳死」延命治療をしてほしいか、してほしくないか?

患者が延命治療を希望している場合でも、家族の経済事情やその他の要素を考慮して、患者が延命治療を望まない意思表示をすることがあることが指摘されています。

ただし、日本の法律では、本人が示した意思に沿っているからといって、治療の中止が許されるわけではないため、尊厳死法制化の課題が残されています。

2018年に国が終末期医療についての考え方を改め、これまでよりも本人の意思を尊重する方針に転換したことが報じられています。

終末期医療とは

終末期医療とは、病気や老衰によって治療効果が期待できず、近い将来に予測される死に直面した患者さんに対して、本人の意思を尊重して尊厳を守り、「苦痛のない自然な死を迎えられるようにする」ためのケアのことです。

このケアでは、延命のための治療は行わず、病気による痛みや不快感だけを取り除き、穏やかな生活を送ることを優先します。そのため、病状の進行や痛みに応じて、緩和ケアが行われることが一般的です。

終末期医療は、日本でも1980年代になってから緩和ケアの発展とともに重視されるようになりました。

また、ターミナルケアとも呼ばれることがあります。

看取りケア、緩和ケア、ホスピスケアといった言葉も関連するものの、それぞれ異なる意味を持っています。

看取りケアは、終末期の患者さんが安心して最期を迎えられるように、家族や周りの人たちが支援することを指します。

緩和ケアは、患者さんが持つ痛みや不快感を軽減することを目的としています。

ホスピスケアは、終末期の患者さんが病院で専門的なケアを受けることができる環境を提供することを指します。

以上のように、終末期医療は、患者さんが最期を迎える際に、本人の意思を尊重して尊厳を守り、穏やかな死を迎えられるようにするためのケアです。

また、緩和ケア病棟において、人生の最終段階において受けたい医療や受けたくない医療について、個別の医療行為ごとにその受療の希望を尋ねる取り組みが行われていることが報告されています。

したがって、患者が延命治療をしてほしいか、してほしくないかは、本人自身が希望することが最も重要であり、その意思表示が尊重されるべきです

しかし、患者の家族や医療関係者が、患者が延命治療を希望していても、患者の状態や周囲の事情を踏まえて判断することもあるため、医療現場においては継続的な議論や啓発が必要であると言えます。

今回の記事では

患者と家族が知っておくべき尊厳死の重要性について詳しく記事にしています。

終活ライフケアプランナー」の私と一緒に最後までお付き合いください。

終活ライフケアプランナーとは?

相続、遺言、保険、葬儀、お墓、介護など、ご本人やご家族がどの分野に悩んでいるのかを的確に捉え、専門家への架け橋としてサポートしていくのが終活ライフケアプランナーです。エンディングノートを通して終活者の人生のたな卸しを手伝い、後悔のないよりよい人生を過ごすためのサポートを行っています。

目次

尊厳死とは?

尊厳死の定義

尊厳死とは、自分の意思で終末期の延命措置を行わず、人としての尊厳を保った状態で自然な死を迎えることを言います

つまり、末期の病気で治療が困難な状態にある患者が、自分の人生の終わりを延命治療によって迎えることを望まない場合に、自らの意思によって医療行為を拒否し、自然な死を迎えることを意味します。

尊厳死は積極的安楽死とは異なり、医師が薬などで人為的に死を迎えさせることは行われません

尊厳死は、自己決定権と人権の尊重が求められる問題であり、医療現場や社会的な議論が必要とされています。

尊厳死の実現方法

尊厳死の実現方法について、いくつかの手段が挙げられます。

尊厳死を望む場合は、自分が終末期を迎えた時に医療の選択について事前に意思表示しておくことが重要です

その手段の一つに、リビングウィルがあります。

リビングウィルとは、事前に意思表示しておく文書のことで、主に延命措置の拒否や苦痛の緩和のための医療の希望、意識がなくなった時の代理人の連絡先などを記載します。

また、尊厳死は本人が望んでいても家族の同意を得られなければ成立しないため、家族との話し合いが重要です。

家族と意見を合わせることができたら、「尊厳死宣言書」を用意する必要があります。

尊厳死宣言書は、「延命治療をせずに尊厳死を希望すること」を理由とともに明記します。

また、家族の同意があること、医師に責任を求めないことも書きます。

尊厳死は最期を迎える一つの選択肢として捉え、家族と話し合いを重ねることから始めることが望ましいです。

リビング・ウィル=尊厳死宣言書

「リビング・ウィル」とは、延命治療を希望するかどうかなど、終末期における医療上の意思決定を行うための文書です

簡単に言えば、「回復の見込みがなく死期が間近に迫った人生の最終段階において、延命治療をしてほしいか、してほしくないか等について、主治医や家族に知らせるために、判断能力が十分なうちに示される意思」のことです。

この文書は、自分自身が判断能力を失ってしまった場合や、病気や事故で延命治療を受けることができなくなった場合に、自分が望む医療措置を主治医や家族に伝えるために作成されます。

リビング・ウィルは、医療現場において患者の意思決定を尊重するための法的な効力を持っています。

また、「リビング・ウィル」は「尊厳死」という概念とも関連しています。

尊厳死とは、自己決定権を尊重し、苦痛を最小限に抑えながら自然な死を迎えることを目指す概念です。

リビング・ウィルは、尊厳死を希望するかどうかというだけではなく、医療措置に関する具体的な意思を表明する文書としても用いられます。

リビング・ウィルについては、近年注目が高まっており、患者の自己決定権を尊重するために、制度や法律も整備されています。

リビング・ウィルを作成することで、患者自身が自分の望む医療を選択することができ、家族や医療従事者も、患者の意思を尊重しながら最善の医療を提供することができるようになります。

尊厳死に関する患者と家族の悩み

尊厳死は、患者本人が自己決定に基づき延命措置の中止を望んだ場合に実現されるものですが、家族の理解と協力が必要不可欠です。

一般的に、医療関係者は家族の言い分や合意を重視する傾向がありますが、患者本人の希望を尊重することが重要です。

一方、患者が延命措置を受けることを望んでいる場合でも、家族がその望みを受け入れられない場合があります。

このような場合には、家族とのコミュニケーションが重要となります。

家族との意見の食い違いが解消できない場合には、医療倫理委員会や専門家の協力を仰ぐことができます。

また、家族が患者の意思を最も阻害している場合もあります。

家族が患者の希望を受け入れられない場合には、患者本人が自己決定権を行使することができる「リビング・ウィル」を作成することができます。

リビング・ウィルは、患者が意思表示できなくなった場合において、延命措置の中止などの希望を伝えるものです。

尊厳死を望む患者が家族に伝えづらい理由

尊厳死を望む患者が家族に伝えづらい理由には、様々なものが考えられます。

病気の進行や苦痛による身体的な疲弊だけでなく、家族とのコミュニケーションの困難や、家族が安楽死に反対していることも原因として挙げられます。

緩和ケア医によると、尊厳死についての知識が広まり、安楽死に触れる機会が増えているため、家族に伝えることが増えているかもしれません。

しかし、家族に伝えづらい理由として、安楽死が社会的にタブー視されていることや、家族の期待に応えられないというプレッシャーを感じていることも考えられます。

また、安楽死が認められている国々においても、家族の同意が安楽死実施の条件になっていることが多いようです。

家族の同意が得られない場合、後々に抗議や裁判に訴えられるリスクが高くなるため、患者自身が望んでも実施が困難になることもあるようです。

家族に伝えづらい理由に加え、患者自身も尊厳死を望むことを認めることができない場合があります。

スイスの報道によれば、患者は自分自身が死ぬことを決断できない場合もあるため、尊厳死を希望していることを伝えることができないということがあるとのことです。

家族が尊厳死を望む患者に反対する理由

一つは、家族が患者の命を大切に思っているため、尊厳死についての判断が難しいと感じることがあることです。

また、患者が尊厳死を望んだ場合でも、家族がそれを受け入れることができない場合もあります。

これは、家族が患者と長く暮らしてきたことや、患者の死を前にしての不安や恐怖などが影響している可能性があります。

また、過去に日本で安楽死に関する法律が整備されていなかったことも、家族が尊厳死に対して消極的な態度をとる理由の一つと考えられます

平成3年の東海大病院の安楽死事件では、医師が家族の同意なしに患者に安楽死を実施したことが問題視され、安楽死に対する不信感や抵抗感が生まれたとされています。

以上のように、家族が尊厳死を望む患者に反対する理由には、様々な要因が考えられます。

尊厳死に関する情報を家族と共有することが大切であり、患者の希望や家族の意向を踏まえ、医師や専門家の支援を受けながら適切な判断をすることが望ましいでしょう。

尊厳死に関する家族と患者のコミュニケーションの重要性

尊厳死は、患者の意思を尊重し、延命治療を中止することで、その患者が死亡することを指します。

患者が尊厳死を望んだ場合、その患者と家族のコミュニケーションが非常に重要になってきます。

患者が望む延命治療の中止や、尊厳死の意思表示を家族に伝えることができれば、患者が最期まで自分らしい生活を送ることができる可能性が高まります。

しかし、家族が患者の意思を無視し、延命治療を続けることもあるため、家族と患者のコミュニケーションが不十分であると、患者が望む尊厳死が実現しない場合もあります。

そのため、患者が望む治療方針を家族と話し合い、家族が患者の意思を尊重することが重要です。

また、医療者が患者や家族と密にコミュニケーションを取ることも必要です。

医療者は、患者が望む延命治療や尊厳死の意思表示を家族に伝えることができるようサポートすることが求められます。

尊厳死を実現するためのサポート

尊厳死を実現するためのサポートについては、日本尊厳死協会が活動を行っています。

同協会は、1976年に医師、法律家、ジャーナリストらが集まって設立された組織であり、尊厳死の法制化を目指しています。

協会は、尊厳死に関する情報提供や法律相談、医療相談などの支援活動を行っており、また、リビング・ウイル(生前の意思表示書)の作成支援も行っています。

尊厳死の具体的な意味については、協会が主張する「尊厳死」とは、末期的な状態に陥った患者が、自分の意思に基づき、専門家の支援を受けながら、自己決定によって死を迎えることができる死を指しています。

ただし、尊厳死を実現するには家族の協力が必要とされ、リビング・ウイルの作成や家族とのコミュニケーションが重要とされています。

尊厳死の法的な扱いについては、日本においては、自己決定権の保障や人権の観点から、一定の条件を満たした場合には尊厳死が認められることがあります。

例えば、医師による同意のもと、末期医療が不可能な場合や、患者が自己決定の意思を明確に示した場合には、法的に尊厳死が認められる場合があります。

以上のように、日本尊厳死協会は、尊厳死に関する情報提供や支援活動を行っており、尊厳死の実現に向けた取り組みを行っています。

https://songenshi-kyokai.or.jp/

日本尊厳死協会は、1976年1月に産婦人科医で、国会議員でもあった太田典礼氏を中心に医師や法律家、学者、政治家などが集まって設立された、尊厳死という概念を広めることを目的とする組織です。

尊厳死とは、延命治療を断ることを選ぶ権利を持ち、それを社会に認めてもらうことが目的です。

現在は、治る見込みのない病態に陥り、死期が迫ったときに延命治療を断る「リビング・ウイル」(終末期医療における事前指示書)を登録管理しております。

今後の目的は、リビング・ウイルの提示という方法を通じて、延命治療を望まない人たちに支援を提供することにあります。

尊厳死に関する法律や制度の説明

日本の法律では、尊厳死について定義されていません。

しかし、治療の中止や拒否をすることができるようになっています。

そのため、患者が尊厳死を望む場合、自己決定権を行使して、治療の中止や拒否を選択することができます。

また、尊厳死を望む患者が治療を中止する場合には、家族や医療関係者とのコミュニケーションが非常に重要となります。

患者の希望や意思を十分に理解し、尊重することが必要です。

一方、尊厳死に関する制度としては、患者が自分自身の希望を事前に書面で記載する「リビング・ウィル」があります。

リビング・ウィルは、患者が治療を中止したい場合や、痛みを和らげるための鎮痛剤の投与を希望する場合などに利用されます。

また、尊厳死に関する問題についての相談や支援を行っている団体もあります。

具体的には、生命の尊厳を考える会や、ABCネットワーク、医療者支援機構などが挙げられます。

尊厳死に関する法律や制度については、現在のところは法律で規定されているわけではありません。

しかし、患者の自己決定権や、リビング・ウィルの存在など、患者が尊厳死を実現するための手段は確立されています。

尊厳死に関する相談機関の紹介

尊厳死に関する相談機関として、以下の団体が挙げられます。

尊厳死に関する相談機関
  1. 公益財団法人日本尊厳死協会[2]  尊厳死に関する相談や情報提供を行っている団体です。また、入会によりリビング・ウイルの作成支援や尊厳死を希望する方々への医療従事者の紹介なども行っています。
  2. 社団法人日本看護協会[4]  看護に関する専門知識をもった専門相談員が相談に応じています。尊厳死を希望する方や家族、医療従事者などからの相談にも対応しています。
  3. NPO法人かがやき[5]  尊厳死を支援する団体で、相談員による無料相談や、尊厳死を希望する方の自己決定を尊重し、その選択が受け入れられる社会を目指す啓蒙活動を行っています。
  4. NPO法人ジャパンエンディングケア協会[6]  終末期医療やエンディングケアに関する情報提供や、尊厳死についての相談にも対応しています。

これらの団体は、尊厳死に関する相談や支援を行っており、尊厳死を希望する方やその家族、医療従事者にとって有益な情報を提供しています。

尊厳死に関する注意点

尊厳死とは、自己決定権を尊重し、自らが希望する医療措置を選択することで、終末期における自然な死を迎えることを指します。

しかし、現在の日本では尊厳死を法律で認められておらず、実現にはいくつかの注意点があります。

まず、家族と話し合いを持つことが重要です。

終末期には本人の意識がないことが多く、家族の判断が大きく影響するため、終末期にどのような医療を行うかについては、家族間でも意見が分かれることがあります。

自分の考えを事前に家族に伝えて意思の共有をしておくことが大切です。

また、尊厳死を選択したい場合は、早いうちに対策を行うことが重要です。

人の寿命は誰にも予測できません。

若くても、万が一のことを考えて、尊厳死についての意思表示をしておくことが望ましいです。

尊厳死を望み、延命を希望しないというリビング・ウィルを残していても、尊厳死はなかなか叶えられません。

医師が「延命措置を怠った」として遺族から訴えられることを危惧するからです。

そのため、超党派の「尊厳死法制化を考える議員連盟」が公表した「終末期の医療における患者の意思の尊重に関する法律案」が注目されています。

この法案は、終末期に延命措置を希望しないことを書面で表示し、2人以上の医師により終末期と判定された15歳以上の患者について、延命措置を差し控える、または中止した場合、医師は民事・刑事・行政上の責任を問われないというものですが、まだ法律化されておらず、反対意見も多い状況です。

尊厳死に関する家族の同意の重要性

尊厳死に関する家族の同意は非常に重要です。

尊厳死協会によると、尊厳死は患者本人の意思に基づくものであり、延命治療を断り自然の経過のまま受け入れる死を指します。

しかし、実際に尊厳死を実現するには、家族の理解と協力が必要となります。

医療関係者には、患者本人の希望よりも家族の言い分や合意を重視する人が多くいます。

そのため、家族の理解が得られない場合は、尊厳死を実現することが難しいことがあります。

また、家族との不和が本人を死に追いやっていたり、その逆の場合もあります。

尊厳死は、本人と家族がともに納得し合意したうえで実現されることが望ましいとされています。

尊厳死に関する書類の作成方法と保管場所の注意点

尊厳死宣言公正証書を作成する場合は、印鑑登録証明書や本人確認証明書、認印が必要となります。

公正証書の基本手数料は1万1,000円であり、正本代は1部250円です。

その他、公証人に出張してもらう場合は、別途出張費用がかかることがあります。

尊厳死宣言公正証書とは、自らの考えで尊厳死を望む旨の宣言をし、公証人がそれを聴取した上で公正証書にするものである。

また、この書類の原本は公証役場に保管されますが、原本と同じ効力を持つ正本を作成することができます。

ただし、正本代は必要な部数だけ手数料がかかるため、注意が必要です。

保管場所については、原本が公証役場に保管されるため、高齢者が入居する施設や家族によっては手続きに困る場合があることから、保険会社が尊厳死宣言書の保管サービスを提供していることもあります。

また、自宅で保管する場合は、防火・防水対策をするなど、細心の注意を払う必要があります。

尊厳死に関する意思決定の変更や撤回の方法

尊厳死に関する意思決定を行った場合、その判断や指示は撤回することができます。

具体的な方法としては、「アドバンス・ケア・プラニング」と呼ばれるものがあります。

これは、自分自身が望む医療の選択肢を予め指定しておくことで、自己決定権を行使することができるものです。

ただし、このような指示や判断は、自分自身が明確に撤回するまで有効であるとされています

尊厳死に関する法律はまだ存在しないため、自己決定権を行使することが一般的に認められています。

具体的には、終末期において延命措置中止を選択することが幸福追求権の一つとして保障されています。

また、このような延命措置中止を選択するためには、自分自身の意思を示す「リビング・ウイル」と呼ばれるものを作成することができます。

このリビング・ウイルは、自分自身が意思表示できなくなった状況において、自分自身が望まない延命措置を受けずにすむようにするためのものです。

まとめ:延命治療をしてほしいか、してほしくないか?

尊厳死に関する議論において、患者と家族の間での延命治療に関する希望については複数の要素が考慮されることが示唆されています。

終末期医療において、過去には周囲の意思が尊重される傾向がありましたが、現在では本人の意思を尊重する方向に改められています。

ただし、本人が延命治療を希望していても、家族の経済事情など別の要素を考慮して患者が延命治療を望まない意思表示をすることもあり得るため、患者や家族の意思を尊重することが重要です。

一方で、尊厳死に関する議論においては、「本人の自己決定に寄り掛かり過ぎていた」という指摘もあります。

尊厳死を正当化するには、客観的条件が必要であると指摘されており、生命短縮が許されるための条件については、未だに明確になっていないとされています。

このように、患者と家族の意思を尊重することが大切であると同時に、尊厳死に関する議論がまだ十分に進んでいないことが示唆されています。

以上の点を踏まえ、医療現場や社会全体で議論を深め、患者や家族の尊厳を守りつつ、適切な延命治療の在り方を模索していくことが求められます。

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